逢いびき

Story

　小さな駅の軽食堂を舞台に三組の男女のふれあいがある。中心は、妻ある男と夫のある女の行きずりの恋とその別れであるが、そのメロドラマぷりはこれだけではあまりに型どおりのお芝居だが、楊所と他の人物がそこに真実を発見させる。
　食堂の女主人と駅員との枯れたつきあい、若い女店員と売子との初々しい仲、それらの生活のスケッチのなかに逢いぴきをする二人だけが、どこかうさんくさく見えるのが可哀そうだ。場ちがいな悲劇を、無関心な視線にかこまれて演じるとき、一歩の距離をおいた感情移入がおこり、二人の男女の哀しみが見事に流れる。

テアトロ評　小松幹生